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Q.所有者が分からない墓石は、どのような手順で撤去できますか?
この記事の要点
- 所有者不明の墓石でも、寺院の判断だけで撤去することはできません。
- 法律に定められた手順は、相続人等の調査、官報公告、立札の掲示(1年間)、改葬許可の申請という流れです。
- 調査を怠って撤去すると、原状回復費用や慰謝料の支払いを命じられるおそれがあります。
なぜ今、所有者不明の墓石が増えているのか
日本の人口は、2024年から2025年にかけて約60万人減少しました。これは姫路市の人口(約53万人)を上回る規模です。少子化と多死社会が同時に進むなかで、墓石の所有者と連絡が取れない、後継者がいないというご相談は、今後確実に増えていきます。
所有者不明の墓石は、放置しても問題が消えることはありません。管理料が入らないまま区画が埋まり、次の世代のご住職がさらに多くの無縁墓を引き継ぐことになります。
寺院の判断で撤去してはいけない理由
墓石は墓地使用者の所有物であり、墓地を使用する権利(永代使用権)はかなり強い権利と考えられています。そのため、「長年お参りがない」「連絡がつかない」というだけで寺院が墓石を撤去すると、民事上の損害賠償責任を負うおそれがあります。実際に、相続人等の調査をしないまま撤去したことについて、墓地の原状回復費用や慰謝料の支払いが認められた例があります。
また、墓石の下に焼骨が納められている場合、これを取り出して他へ移すことは「改葬」にあたり、市区町村長の許可が必要です(墓地、埋葬等に関する法律5条)。許可なく行えば、同法違反の問題になるほか、態様によっては墳墓発掘罪(刑法189条)が問題になることもあります。
撤去までの5つの手順
手順① 相続人や縁故者がいないかを調査する
最初に、墓石の所有者(墓地使用者)の相続人や縁故者がいないかを調べます。寺院に残る檀信徒名簿、過去帳、墓地使用の契約書などから、所有者の氏名や住所の手がかりを集めます。
弁護士にご依頼いただいた場合は、職務上の請求により住民票や戸籍を取得し、相続人の有無やその現住所を調査できる場合があります。
特に注意が必要なのは、比較的新しい墓石です。お花や線香、清掃の跡など、最近参拝した痕跡がないかを注意深く確認してください。痕跡がある場合は、相続人等が存在する可能性が高いといえます。
手順② 官報に公告する
調査を尽くしても相続人等が見つからない場合は、墓地使用者等に対して、一定の期間内に申し出るよう官報に公告します。公告には、死亡者の本籍及び氏名と、墓地使用者等や縁故者に対して1年以内に申し出るべき旨を記載します(墓地、埋葬等に関する法律施行規則3条)。
手順③ 墓地に立札を設置する
官報に掲載したものと同じ内容の立札を作成し、無縁墳墓の見やすい場所に設置します。当事務所では、墓石の近くと墓地の入口付近の2か所に設置することをお勧めしています。
手順④ 1年間、掲示を続ける
立札は1年間掲示し続けます。その間、立札が確かに掲示されていたことを後から証明できるよう、定期的に写真を撮影して記録を残しておいてください。
手順⑤ 改葬許可を申請し、許可を得てから撤去する
1年間申出がなかった場合、市区町村の窓口に改葬許可を申請します。申請書には、埋蔵の事実を証する書面のほか、無縁墳墓の写真と位置図、公告をしたが期間中に申出がなかった旨を記載した書面、官報の写しと立札の写真などを添付します(同規則3条)。改葬許可が出てはじめて、焼骨を合祀墓などに移し、墓石を撤去することができます。
なお、この手続は、あくまで改葬の許可を得るための行政上の手続です。墓石の所有権や墓地使用権といった民事上の権利の問題が、これで当然に解決するわけではない点に注意が必要です。
調査の結果、相続人が見つかった場合
相続人等がいることが分かったにもかかわらず、公告の手続を進めて撤去してしまうと、損害賠償責任を負う可能性が高くなります。この場合は、相続人と話し合うことになります。
話し合いの結果、相続人が管理費(護持会費等)を今後支払うことになれば墓地は残り、墓石の撤去や墓じまいに同意いただければ、寺院がまとめて撤去することもできます。管理費の支払にも撤去にも応じていただけない場合は、未払いの期間などによっては、永代使用権の解除と墓石の撤去を求める訴訟を検討することになります。
費用と期間の目安
公告から改葬許可までの期間だけで最低1年かかり、調査を含めると、着手から撤去までは1年半程度を見込んでおくのが現実的です。
当事務所では、墓地1基の撤去につき、弁護士費用16万5千円(税込)+実費(官報掲載料、戸籍等の取得費用など)でお受けしています。無縁墓が多数ある場合の費用はご相談ください。調査の結果、相続人が判明して交渉が必要になった場合には、別途費用がかかることがあります。
これから墓地の契約をする際のお願い
新たに墓地の契約をされる際は、必ず契約者の住民票を取得して保管してください。令和元年に、住民票の除票等の保存期間が5年から150年に延長されたため、住民票の情報があれば、将来、相続人の有無を調べることが可能になります。
反対に、平成26年以前に亡くなった方については、住民票の除票が既に廃棄されており、相続人の調査が難しい場合があります。撤去をお考えの墓石がある場合は、できるだけ早めにご相談ください。