お寺弁護士.com弁護士法人ひこぼし法律事務所 弁護士 村山雅信

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実例:所有者不明の墓石210基をどう整理したか

この記事の要点

  • 前住職の時代から管理が止まっていた墓地で、所有者不明の墓石が約210基見つかりました。
  • 一度にすべてを撤去するのではなく、相続人が見つかる可能性の高い新しい墓石から着手しました。
  • 最初に調査した約10基のうち、半数ほどで相続人が判明し、話し合いにより寺院がまとめて撤去できることになりました。

ご相談のきっかけ

ある寺院のご住職から、「墓地の中に、誰のものか分からない墓石がたくさんある。どこから手を付ければよいか分からない」とのご相談をいただきました。

お話を伺うと、前住職の時代から墓地の管理が長く手付かずになっており、管理料の支払状況も、墓石ごとの使用者も、はっきりしない状態でした。

まず、墓石を一基ずつ確認する

最初に行ったのは、ご住職と一緒に墓地を歩き、墓石を一基ずつ確認する作業です。刻まれた家名や建立年、参拝の痕跡の有無を記録し、檀信徒名簿と照らし合わせていきました。

その結果、使用者が分からない墓石が約210基あることが分かりました。中には江戸時代に建てられた墓石も多数含まれていました。

すべてを一度に撤去しようとしない

所有者不明の墓石を撤去するには、相続人等の調査、官報公告、1年間の立札掲示、改葬許可の申請という手順を踏む必要があります。210基を一度に進めることは、時間の面でも費用の面でも現実的ではありません。

そこで、比較的新しい墓石約10基に絞って先に着手しました。新しい墓石ほど、使用者や相続人が存命である可能性が高く、住民票や戸籍を手がかりに調査できる見込みがあるからです。

調査の結果

古い檀信徒名簿の情報をもとに住民票や戸籍を調査したところ、約半数の墓石について相続人が判明しました。

相続人の方々にご連絡し、事情をご説明したうえで、墓石の所有権、墓地の永代使用権、遺骨の所有権をいずれも放棄していただくことについて同意を得ました。これにより、長い公告期間を待つことなく、寺院がまとめて撤去・合祀を進められることになりました。

相続人の多くは、遠方に住んでいたり、代替わりで墓の存在自体を知らなかったりした方々でした。「お寺から丁寧に連絡をもらえて助かった」との声もいただいています。

江戸時代の墓石をどうするか

残る課題は、江戸時代に建てられた多数の墓石です。これらについては、後継者が存在する可能性は極めて低いと考えられる一方で、法令上の手続を省略してよいという規定があるわけではありません。

正式な手順をすべて踏むのか、それとも別の方法を採るのかは、撤去の必要性、費用、将来のリスクを踏まえて、ご住職と協議を続けているところです。

この事例から言えること

(1)問題は、先送りするほど大きくなる

この墓地の問題は、前住職の時代に管理が止まったことから始まっています。所有者不明の墓石は、時間が経つほど調査の手がかりが失われ、解決にかかる手間と費用が増えていきます。ご自身の代で解決できることは解決しておく、あるいは次のご住職と一緒に取り組むことが、将来の負担を減らす一番の方法です。

(2)優先順位を付ければ、動き出せる

210基という数字だけを見ると途方に暮れてしまいますが、相続人が見つかる可能性の高いものから順に取り組めば、一歩ずつ前に進めます。

(3)契約時の住民票が、将来の調査を助ける

今回、調査ができたのは、名簿に残っていた氏名・住所の情報があったからです。これから墓地の契約をされる際は、必ず契約者の住民票を取得し、保管してください。

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